今回はDeFiのイールドファーミングの基礎知識について解説していきます。
1年ほど前からよく聞くようになった「イールドファーミング」ですが、DeFiのサービス内容などから注目が高まっています。
興味のある人や、改めて機能やサービス内容について確認したい人はぜひ読んでいただけたらと思います。
1.この記事のメリット・目的
目の前の数字に踊らされずに判断する
私がDeFiに参加する上で重要だと思っていることは、目の前の数字にやチャートに踊らされずに知識知識をつけて参加することが大切だということです。
なぜかというと、APRがいくら高くてもトークン価格が下がってしまうと損失になってしまったり、チャートが上がっているように見えてもパンプ(いろんな人の企みによって上がっているだけ)の場合もあります。
DeFiは良くも悪くも無法地帯なので、ファームの質もピンキリです。なのでまずはちゃんとした知識をつけることが大切です。
そして知識をつけるためにも、普段をファームを見ていて「なんでこのファームはこのプールだけAPRが高いんだろう?」といったことを気にして運用するだけでも、かなり慎重に判断できる知識がついてくると思います。
基本的な知識が必要
基本的なDeFiの知識をつけていないと、ちんぷんかんな考えのもと動いてしまうことが多いので、まずは基本的な知識からつけることが大切です。
また、もしかしたら今後はDeFiのサービスを日本人も作りやすくなるかもしれないので、これを見ている方の中にも、誰かが運営側に回る可能性もあります。
どんなサービスを作るにしろ、全く知識がない状態から始めるのと、少し知識がある状態から始めるのでは難易度が違うので、このタイミングでしっかり知識をつけておくことが後々自分を助けるんじゃないかなと思います。
2.イールドファーミング・DEX(AMM)とは?
まず、DEXというのは「トークンを交換できる取引所」のことをいます。DEXは、自動で取引する相手を見つけてくれるのですが、自動でマッチングする取引所を作るためにもトークンの流動性がすぐに交換できる状態を作る必要があります。
DEXの開発側としては、元手の資金を出さずに取引所を作って運営したいので、この流動性はユーザーに提供してもらいたいという思いがあります。こういった開発者側の考えのもと、DEXではユーザーが流動性を提供する仕組みになっています。
そして今回紹介するイールドファーミングは、流動性を提供してくれたユーザーに対しては報酬を渡すという仕組みになっています。
ちなみに「DEXの基礎知識」の記事やYoutube動画で全部紹介しているので、興味がある人は、そちらを一旦見ていただくと良いかもしれません。
参考:DeFi基礎知識動画
3.マルチプライヤーとは
DEXではいろんなユーザーが流動性を提供してくれている訳ですが、開発者によっては考えがそれぞれあり、集めたいトークンと、別にあってもなくても良いトークンの差をつけたいという発想があります。
だから流動性ペアに優先順位をつけるのですが、この流動性に順位をつけるものがマルチプライヤーになります。
例えば、開発者からするとたくさんの人に自分が作ったものを利用して欲しいので、独自トークンとのペアは優先順位が高くなります。独自トークンとは自分たちで発行しているトークンのことです。具体例として、PancakaSwapだとCAKE、BinanceだとBNB、などです。
そして、この独自トークンとのペアを高い優先順位にして、反対にUSDT、BUSD、USDCなどのステーブルコインを低い順位にして、他のトークンとの差をつけます。
ちなみに、このマルチプライヤー関連の話では「重み/Weight」という概念を使います。この用語は良く使われているので、知っておいたほうが良いと思います。
マルチプライヤーがイマイチ分からないという方は、ファームの横に書いてある数字をチェックしてみてください。例えば上の画像だと「Multiplier 40x」「Multiplier 8x」「Multiplier 2x」など色々表示されています。
この数字は開発者側が設定する数字です。なので、開発者側が集めたいトークンが高くなって、どうでも良いものが低くなるという仕組みになっています。独自トークンとのペアだったら勝手に高くなるというわけではありません。
ファーム報酬の計算
計算方法は上の図の通り、①②③を掛け合わせた数字がファーム報酬になります。
画像の左側に「報酬blockごとのearned」と書きましたが、blockという概念がざっくり言うとブロックチェーンという感じなので、わかりにくい方は「トランザクションごと」みたいな感じに思ってください。
①ブロック報酬
①ブロック報酬では「1ブロックごとのトークン排出量」と書いています。これは開発者が一方的に決めます。
PancakeSwapがわかりやすいので例に挙げながら解説していきます。まずトークンのロードマップやドキュメントを見ていくと下の画像のような表示を確認することができます。
この図はCAKEトークンについて書かれています。まず左上に太字で「Block Emissions」とありますが、これは1ブロックごとの報酬のことを言います。そのすぐ下の水色枠には「Minted 40 CAKE」と書かれているので、意味としては「1ブロックごとに40CAKE排出します」ということになります。
そしてさらにここから、Burn用に20CAKE、Farm&Lottery(宝くじ)用に10CAKE、Pool(Syrup pool)用に10CAKE振り分けられます。こういったことをCAKEは定められており、しっかりロードマップにして発表してくれています。
ちなみに、排出量は英語表記だと「Emissions」と記載されることが多いです。なのでEmissionsというワードが出てきたら、おそらく排出量のことなんだろうな。と考えると良いと思います。
そして、Emissionsの数字が多ければ多いほどトークンをたくさんもらえる可能性が高いです。ただ、トークンが多いからといって利益が多くなるわけではありません。なぜかというと、トークンが多いということは排出量も多く、トークンの価値が低くなりやすい傾向にあるからです。
実際に、仮想通貨やDeFiを長くやっている方はすぐわかると思いますが、この点だけ注意してください。
②プール(ファーム)割当
先ほどの計算式が書いてある画像では、「②プール(ファーム)割当「重みの割合計算」」と書いています。下のPancakeSwapのプールのページ画像を見るとたくさんプール先がありますが、例えば、一番上のCAKE-BNBの占める割合はどれくらいか?みたいなことを計算します。
簡単に言えば「プールの重み」を「すべてのプールの重み」で割るといった仕組みになっています。
例えば、プールが下の画像の3つしかなかったとします。その場合マルチプライヤーが「40x,8x,2x」しかないので、全体の重みの合計は「50x」となります。
そして、CAKE-BNBは「40x」なので「50xのうちの40x」となり、割合で言うと80%になります。そしてBUSD-BNBは16%、XEND-BNBは4%となります。
なので、合計のEmissions(排出量)があったとして、そのうちの80%が1番上のCAKE-BNBに、16%がBUSD-BNBに、4%がXEND-BNBに割り当てられていきます。
そしてEmissionsが40だとすると報酬割当は32、6.4、1.6となります。Emissionsが10だとすると報酬割当は8、1.6、0.4となります。このような流れでプールの割当が決まっていきます。
③プール内のシェア割り当て
③プール内のシェア割り当てでは、「自分のシェア計算」と書いています。
例えば自分がいま、上の画像にあるCAKE-BNBに入れているとします。その場合、合計(Liquidity)で$873,000,998の資産が集まっていることがわかりますが、この合計の資産の中で、自分が持っている割合はどれくらいか?を計算した数字が③になります。
わかりやすく言うなら「自分の貢献度を計算する」といった感じです。
例えば、Liquidityが$10,000で、自分が預けた分が$100だったとします。この場合プール内での自分のシェア率(貢献度)は1%になります。そして、プール割当の1%がもらえることになります。
仮に1ブロックごとのプール割当が32だとすると0.32もらえることになるので、毎ブロックごとに0.32が入ってくるということになります。
ここで気付いた方もいるかもしれませんが、他の人が預ければ預けるほど、自分の割り当ては減っていきます。例えば自分が$100を預けて放置してる間に、他のユーザーが参加してきて$20,000になったとします。するとシェアは0.5になるので自分の割り当てが減ることになります。
4.ファームのAPRの意味
イールドファーミングに参加するとき、ほとんどの人がAPR(年利)を見て参加するかなと思います。
このAPR(年利)に関してですが、APRの計算はとてもシンプルで下の図にも書きましたが、直近ブロックでのLiquidityに対する報酬(ドル換算)となります。物によっては、通信の関係で直近ブロックではなく数個前のブロックをとっているファームも多いです。
勘違いしやすいので注意ですが、この下の図の計算式で出るのは1ブロックごとの報酬です。これを1年で計算したときの数字がAPRとなります。
APRの計算式は下の図の通りです。
この計算式をさらに詳しく解説すると、
下の図の赤枠の部分を計算して出た数字が「1ブロックごとのプールの報酬」になります。
例えば、CAKE-BNBに当てはめて上の赤枠の部分を計算してみると、1ブロックごとの報酬のドル換算ができます。この記事を書いている時点ではCAKEが$19(約$20)くらいなので、仮に1ブロックごとに5CAKE配られているとしたら約$100放出さることが計算できます。
それに対して、現在のCAKE-BNBのLiquidityをドル換算すると8億7000万ドルなので、8億7000万ドルに対して1ブロックで$100出てくるとしたら比率が計算できます。(8億7000万ドルに対して何%か?という数字)
ここで出てきた数字に対して1年間分かけるとAPRとなります。
ファームのAPRのTIPS
続いて、APRに関しての詳しい情報・心付けについて話していきます。
- Liquidityが増えると母数が増えるのでAPRは下がります。
- ブロック報酬が増えるとAPRは上がります。
- トークン価格が上がるとAPRが上がります。(Liquidityも上がった場合は変わらない)
3つ目の「トークン価格が上がるとAPRが上がります」についてもう少し詳しく説明すると、先ほど、CAKEの価格が現在約$20で、CAKE-BNBで仮の場合で5CAKEが配られると言いました。
もしCAKEの価格が$40になった場合、8億7000万ドルに対して$100〜$200になるのでAPRは倍になります。ですが、Liquidityも流動性なのでLPの中にトークンがあります。どういうことかというと、例えば、CAKE-BNBというトークンが実際には中にあって、それをドル換算されたものがLiquidityと表現されています。
なのでCAKEが上がるということはLiquidityのドル換算も増えることになります。
逆にBUSD-BNBのようなCAKEではないプールの場合は、BUSDとBNBのドル換算がLiquidityになっていて、もらえるのはCAKEトークンなので、CAKEトークンの価格が変わらずにBNBが上がっていった場合にはLiquidityだけが増えていきます。すると、Liquidityだけが増えていくのでAPRは下がります。
難しく感じた方もいると思いますが、上の計算式だけでも覚えると今後何かあったときに役に立つと思います。
5.APY/APR/Daily(Monthly)の意味
APRは年換算利回り、APYは年間利回り、Dailyは日換算利回りのことを言います。
基本的にはAPRよりもAPYの方が高いです。なぜかというとAPRは何もしないで放置した場合に「今の利率のまま1年間放置したとしたら何%になる?」という計算方式になります。
それに対してAPYは「今の利率のまま複利してガチで運用したら何%になる?」という計算法式になります。特にdaily-compound(1日1回複利)をもとに計算されていることが多いです。当たり前ですが、複利した方が利率が良くなるのでAPYの方が高くなりやすいです。
続いて、Dailyについてですが、DailyはAPRを365や360で割ることが多いです。これで1日あたりの利回りが出ます。同じように12で割ればMonthlyも出せます。
このカラクリがわかっていれば下の図のような、イールドファーミングでの「APR、Daily(1d)、APY(365d)」の仕組みがわかると思います。
ちなみに、左のAPRは純粋な年利で、このAPRを365で割ったものがDaily(1d)となります。そしてこれをdaily-compoundしていくとAPY(1d)となる。ということになります。
ここら辺を覚えておくと、用語を間違えることもなく、勘違いすることもなくなるかと思います。
6.まとめ
ここまでの内容で難しいところがあったと思うので、イールドファーミングを利用するにあたって覚えておいた方が良い基本的な知識を簡単にまとめます。
①まず、DEXは取引所ですが、流動性がないと取引ができないので、それならイールドファーミングという形式をとればいいんじゃない?ということでイールドファーミングになりました。
②流動性の優先順位は、開発者側がどういう流動性を欲しがっているかで決まるので、開発者側が欲しいものが順位が上がります。そのために「重み」という概念を使ってマルチプライヤーという表記になっています。
③Emissionsは1ブロックごとの排出量(報酬)の意味です。
④プールごとにごとに割当が計算出来ます。
⑤プール内でのシェアでもらえる量が変わります。
⑥APRはLiquidityに対する割合です。
今回の記事では、計算式が出てきたりしたので、もしわかりにくかった方は何度か読み返してもらえたらと思います。また、この記事と同じ内容のYoutube動画もアップしているので、動画の方が理解しやすいという方は、動画をチェックしてもらえたらと思います。
3MIKAN:イールドファーミングの基礎知識
また、読むだけよりも実際にファームを見ながらやると理解しやすいと思います。長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!!