インパーマネントロスとは、簡単に言えば「LPを組まずに別々に持っていたほうが儲かっていた」という損失のことを言います。(LPは流動性提供トークンです)
インパーマネントロスは、流動性プール(流動性マイニング)を使いLPを組んでいる人に起こることですが、一時的にこういった損失が起こる場合があります。
とはいえLPを組んでいる間(そしてファームしている間)は手数料による利益も得られるため、そこまでシビアな話でもありません。
ただ、インパーマネントロスについて勉強するとなると、仕組みや損失の計算方法が難しいのでこの記事では、メリット・デメリットも含めて「インパーマネントロス」について、詳しく解説していきます。
インパーマネントロスを簡単に確認したいだけであればポートフォリオツールの方が簡単なのでそちらもまとめて紹介します。
インパーマネントロス(変動損失・IL)について
DeFiをやっていると、金額がどんどん上がるトークンがあったり、逆に下がっていくトークンがあります。そういった場合に、トークンのまま持っていた方がいいのか、LPを組んでいた方がいいのか、わからない人もいると思います。
実際のところLPを組んで預けていたほうが、イールドファーミングをするにも、他に預けるにしろ利率がいいので、ほとんどの人がLPを組んでいます。
ただ場合によっては、トークンを持っていた方が利益が大きくなり、結果として「一時的な損失をおさえられていた」ということが起こります。
例えば、YieldwatchにあるSOUP-BNBを例に見てみると……

「Impermanent Loss」の欄に赤文字で「$982.99」と表示されています。

この数字になるのはかなり珍しく額も大きいのですが、この記事を書いている当時SOUPの価格が約$800から約$400まで下がったために一時的な損失として$982.99の損失がでました。
このタイミングでLPを引き出すと「$982.99」の損失が含まれた状態で入ってきます。ただ、こちらはBeefy(ビーフィー)に預けているので稼いだ金額も合算するとプラスにはなります。とは言え、一時的には損失はしている状態です。
では、そもそもなぜこのようなインパーマネントロス(損失)が起こるのかを解説していきます。
インパーマネントロス(変動損失)はなぜ起こるのか?
インパーマネントロスはトークンの数量が変わることが原因で起こります。
下の画像の「Deposit Tokens」は元々預け入れたときのトークンの数量を表示しています。簡単にいえば、ここの数が変化することでインパーマネントロスが起こります。

なぜトークンの数量が変わってしまうかというと、例えば「SOUPを売りたい」という人がたくさんいた場合、SOUPのトークン数が急激に増えBNBのトークン数は減っていきます。
実際に、この記事を書いている数日で、SOUPの価格が急激に下がったためにSOUPを売る人が増えました。さらにBNBに限らず他の通貨に交換する人も増えました。
そのため、下の画像↓の「Token Change(トークンの変動)」に表記されている通り、SOUPのトークンは5.47増え、BNBは12.85減りました。

ではどのようにインパーマネントロス(損失)の額は計算されるのか?
インパーマネントロス(変動損失)の計算方法

ここからは具体的な計算方法について解説していきます。ここではシミュレーション形式で行いますが、精密に計算するとなると普通の電卓では厳しい場合があります。
すでにファームしているLPトークンのインパーマネントロスを知りたい場合など、結果のみが必要な場合にはポートフォリオツールを使ったほうが圧倒的に早いです。
計算方法は「もっと変動損失の仕組みについて詳しく理解したい!」という人向けになりますので、興味がある方のみ読んでいただければと思います。
ということで、上の画像のシミュレーションを扱っていきます。
- 1BTC:50,000USDTでLPを組みます。(レートは1BTC = 50,000USDT)
- その後、BTCの価格が4倍にあがる
- LPを解体すると、0.5BTC:100,000USDTが戻ってくる
- この瞬間 50,000USDT分 の損失が起きている状態になる
時系列に沿って説明していくとこんな感じです。
LPは中身のトークンの数量を保存しているわけではなく、流動性プールの中の自分のシェア率を表しています。(流動性プールの中の自分の配分みたいな)
ですのでシェアが1%だとすれば、解体する時にもそのシェアに応じてトークンが返ってきます。元々預けたトークン数量が返ってくるわけではありません。
流動性プールの中身が変わる理由

インパーマネントロスについて理解する場合、「流動性プール」に関する理解が必須になります。
流動性プールはスワップのたびに中身のトークン比率が変わります。上画像のように、スワップするユーザーがいると「出るトークン」と「入るトークン」があるからです。
その後、トークン比率を再計算して価格レートが決まるわけです。
このように流動性プール内のトークン比率が変わるので、LPを構成している中身も比率が変わっていきます。
インパーマネントロスの詳細な計算

IL(インパーマネントロスの略)の計算には、レート変動とトークン比率変動の関係を理解するとできるようになります。
一般的に書いたのが上画像で、流動性の「A x B = 一定」というトークン数量比率のルールがあり、そこから導き出すことができます。
上の画像についての具体的に先程のシミュレーションで考えてみましょう。
この数量の変化とレートの変化の式が分かってくれば、ILは計算できますね。
レート変動とトークン比率変動からインパーマネントロスを計算

レート変動とトークン変動比率からILを計算すると上画像の通りになります。
2つのトークン価格がA→A’、B→B’となった場合

となります。(割る形式にすれば、数量を考える必要がないため)
ここで、1つ具体的に計算してみましょう。
- AをBTCなどのトークンとして、50,000$(A)→200,000$(A’)
- BをUSDTなどのトークンとして、1$(B)→1$(B’)
この条件で計算をすると、答えは4/5になります。つまり80%。20%分がインパーマネントロスによる損失と言えます。
実際にBTCが4倍になるシミュレーションでも、ILによって20%少ない金額になっています。

インパーマネントロス(変動損失)の早見表
ほとんどの方は、「◯倍になったらどれくらいの損失」というのが分かればいいかと思うので、早見表を作っておきます。
倍率 | 損失割合 |
1倍 | 0% |
1.2倍 | 0.41% |
1.5倍 | 2.02% |
2倍 | 5.72% |
2.5倍 | 9.65% |
3倍 | 13.40% |
4倍 | 20.00% |
5倍 | 25.46% |
10倍 | 42.50% |
普段からイールドファーミングをよくやっていて、インパーマネントロスが気になって仕方ないかたはスクリーンショットして保存しておくことをおすすめします。
「4倍になった場合20%の損失になる」というのが一番計算しやすいので、ここだけでも覚えておいてそれより大きいか小さいかで判断するでもいいと思います。
10倍になると半分くらい損失になるんですね…これは衝撃。
インパーマネントロス(変動損失)を簡単にチェックするツール
ほとんどの方は具体的に計算する必要もなく、ツールを使うだけで十分です。
既にファームしているLPのインパーマネントロスを計算したい場合

ApeBoardで確認できます。
昔は他にも確認できるツールが複数あったのですが、PRO機能のみしか使えなくなったりと変更が行われていきました。
現在は、ApeBoardが最も見やすいかと思います。(というより、これで見れるので他のツールをわざわざ探してないです)
価格だけでインパーマネントロスのシミュレーションを計算したい場合

IImpermanent Loss Calculatorというツールがあります。
使い方が説明不要なレベルで使いやすい計算機があります。2つのトークンの変動前価格・変動後価格を入力するだけです。
https://dailydefi.org/tools/impermanent-loss-calculator/
インパーマネントロス(変動損失)のまとめ
基本的には、どのLPも価格の変動が起きればインパーマネントロスは発生します。
LPを組むときに、「確実に上がるな」と思うトークンを持っているのなら、トークンをそのまま持っていた方が利益が出るので、そのまま持っておいた方がお得です。
ただ、トークンをそのまま持っているとAPY(年利)が良くないなどの弊害もあるので、その辺りの兼ね合いを考慮しながら運用した方がいいです。
そして、今回のインパーマネントロスの仕組みをざっくりでもいいので理解していただいて、今後、流動性マイニングやイールドファーミングをする際の判断材料にしていただければと思います。
よくわからないという人は「3mikan」のYouTubeでも詳しく解説しているのでそちらも見ていただければと思います。